●秋山記念生命科学振興財団の助成を受けた、「森と里つなぎプロジェクト」の報告です。
このプロジェクトでは、「森の道」を基礎プロジェクトとし、
それを活用した「自伐支援」「資源循環」「森の相談」を組み合わせ、
森と人のくらしが近づき、めぐみが循環することを目標に活動します。
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陣内です。
2011年の5月から、秋山財団の助成をいただき、
「森と里つなぎプロジェクト」に取り組んできました。
昨年から1年間取り組んできたまとめを、
数回にわけてご報告します。
今回は、「プロジェクトへの思い」です。(ちょっと長いです)
●どうして、「森と里つなぎ」なの?
このプロジェクトでは、「森の道」づくりの技術開発や人材育成、
小型の機材などを使った、アマチュア林業の支援(自伐支援)、
薪などのほか、木工で使用する小ロット・多樹種の木材供給(資源循環)、
山主や都市住民のさまざまな思いをプランにする「森の相談」を
つなぎ合わせながら進める計画です。
いま、日本の林業をたてなおすために、
細切れに所有されている森をまとめて集約化し、
そこに大型機械を入れて間伐をして、コストを下げ、
木材をたくさん出して、自給率もあげよう、
という目標がたてられました。
林野庁の「森林林業再生プラン」です。
でも、もりねっとはそこに抜けているものがあると感じています。
効率化した機械でどんどん手入れは進む。
でも、山主さんたちは、契約のハンコを押すだけにならないか?
数年前から、農村の聞き取り調査をしてきましたが、
「自分で手入れしたい」
「何かしたいけど、どうしたらいいか分からない」
「手入れして薪に使いたい」
「自然豊かな森に再生したい」
こんな声をたくさん聞きました。
こんな声に、林業界はちゃんとこたえてきたのだろうか?
きめ細かいアドバイスをしてきたのだろうか?
「素人には無理」と決めつけていなかっただろうか?
実は、こういうことに応えていくと、
様々な森と人との関係ができて、
農村、山村のくらしがゆたかになったり、
●「森の道」づくり
そして、山主さんが森に行きたい、
どうなっているのか見たい、何かしたい、
そういうとき、「森の道」があるといい。
立ち木をよけながら、ゆったりと山をめぐる、
森にも人にもやさしい道です。
これには、実は高度な技を駆使しているのです。
削りっぱなし、大雨で崩れる道とは違います。
道づくりの名人、田邊由喜男さんの指導を受けながら、
北海道にあった道づくりを目指しています。
(2011年6月の研修会のようす)
●「自伐支援」と、「資源循環」
森に入れるようになると、
いままで眠っていた山主さんの思いが、
むくむくとわいてきます。
(これまで何度かそういうことがありました)
「薪を出そう」
「丸太を切り出して、小屋づくりに使えないかな?」
「ほだ木をとろう」
「山菜をとろう」
「焼肉しよう」
焼肉はすぐに実行できるのですが、
重たくてかさばる木材を運び出すのは大変です。
でも、農家にはトラクターがある。
実は、ヨーロッパなどでは、農家のお父さんが、
トラクターを駆使して林業をやっています。
そこで、ヨーロッパの機械をテストしよう、
いろんな角度から、「自分でやる林業」をテストしてみよう、
そして、安全に、効率よく、楽しく作業できる条件は何か、
農家の人たちに提案したい。
そう思いました。
(写真はトラクターにつけた、丸太の積み込み用アタッチメント、
オーストリアから輸入したもののテストを行っています)
さらに、自分で使う薪を出すのもいいけど、
地元のみんなで集めてきた原木を、
みんなで薪にすることができたら、
農閑期の仕事にならないか?
そんなことも可能になればいいと思い、
まずは自分たちで実験して、
データをとることにしました。
ここでもきっと、森の道、トラクター、
農家のトラックが活躍すると思っています。
実は、ヨーロッパ各地では今でも薪が健在で、
薪づくりが農家の副収入になったり、
燃料用のチップも農村のビジネスになっていたりします。
森を育てながら、田舎が美しく、豊かになれば、
ほんとうに素敵だと思います。
●プロジェクトのネットワーク
もちろん、もりねっとだけでは、
このプロジェクト実行は不可能です。
森の道技術では田邊由喜男さん、
森の手入れ技術では道立林業試験場や北大、
山主さんとの話し合いでは旭川市森林組合や、
地元農家の世話役の方々、
フィールドを提供してくださる山主さんたち、
木工家との広葉樹材利用では、旭川市工芸センター、
木質バイオマス利用では、森のエネルギー研究所、
その他たくさんの方々といっしょに、
プロジェクトを進めていきます。
ひとつひとつの断片が、モデルになるためには時間がかかります。
しばらくは全体像が見えにくいかもしれません。
プロジェクトの形が少しずつ変わっていくかもしれません。
でも、地域にとって最適は何か?を、探っていきます。
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